緊急駆けつけ業界ヒストリー第6回:“お客さまの本当の要望”へ挑む―独立を後押しした“つなぐ”人脈

修理・修繕だけじゃ足りない? サラリーマン時代の葛藤
松川麻衣
「前回は“上場企業のジレンマ”がきっかけで、松下さんが独立を検討し始めたところまで伺いました。今回は、その独立の経緯をもう少し詳しく教えてください。」
松下直史
「はい。サラリーマン時代にずっと感じていたのは、修理・修繕のサービスだけでは、不動産管理会社の本質的なニーズを満たしきれないということでした。不動産会社には入居者探し、資産運用提案、大家さんとのコミュニケーションなど、多岐にわたる課題がありますから。
当時、私は会社の与える範囲にとらわれず“できないことは、できる人を繋ぐ”という形で対応していたんですけど、もし自分で会社を作れば、もっと自由度を持って包括的なサービスができるはずだと思ったんですよね。」
松川麻衣
「修繕対応を超えたコンサル的アプローチをするには、サラリーマンの枠だと限界がある…と。」
松下直史
「そうです。会社に雇われている以上、扱える商品やサービスが限られるわけで、お客さまの本当に求めていることに十分応じられないもどかしさがありました。」
できないことは“できる人”を繋ぐ――独立への基盤
松川:
「実際、サラリーマン時代から“自社外の専門家に繋ぐ”動きをされていたそうですね。それが独立の基盤になったと?」
松下:
「はい。たとえば“不動産仲介件数を増やしたい”“管理ノウハウを学びたい”という相談があれば、私の知るコンサル会社や経験者に繋ぐようにしていました。自分の会社の商品範囲外でも、“目の前にある要望なら応えたい”と思っていたんです。
それが結果的に人脈を広げることに繋がり、“もっと自由な立場でサービス設計できれば、この人脈を最大限活かせる”と気づいたのが独立の大きなきっかけですね。」
社名『ZENBU』に込めた思い——有限な人と無限の企業
松川:
「ところで、独立後の社名が『ZENBU』というのはとても印象的です。どういう経緯や想いがあったのでしょう?」
松下:
「私の考え方として、企業は人よりも長く続くものだと思っています。人間には寿命がありますが、会社はうまく運営すればずっと存続できる存在ですよね。だからこそ“普遍的な価値を世の中に発信し続けられる企業”をつくりたいという強い願いがありました。
“ZENBU”というのは、“まるごと”“全部”といった意味合いを込めています。社員が豊かにならなくて、どうしてお客さまや業界を豊かにできるのかという発想もありますし、修理・修繕だけでなくあらゆるニーズに寄り添える会社を目指す意味も含めて、“ZENBU”という名前にしたんです。」
松川:
「なるほど。“まるごと”という感覚が、不動産会社の多様な課題に応えるスタンスにも通じるわけですね。」
松下:
「そうですね。単なる修理だけで終わらない、“お客さまの求めることを全部カバーする”企業になろうという想いです。」
次回はコロナ禍での法人化へ——想定外の壁と新たな展開
松川:
「なるほど。独立を後押しした“つなぐ”人脈や、『ZENBU』のネーミングの背景もよくわかりました。実際に法人化された2020年4月はコロナ禍のスタート時期でしたが、こちらも相当な苦労があったのでしょうか?」
松下:
「はい。そのあたりがまさに次回の焦点ですね。リモートワーク普及で想定外の壁もありましたし、採用も大変でした。第7回で詳しくお話ししたいと思います。」
【次回予告】
松川:
「今回は、“修理・修繕だけでは不十分”と感じた独立の理由に加え、サラリーマン時代から築いていた“つなぐ”人脈、そして社名『ZENBU』に込めた強い想いを詳しくうかがいました。次回(第7回)は、いよいよコロナ禍での法人化に挑んだ際の具体的な壁や、どう軌道に乗せていったのかを中心にお伺いしますので、楽しみにしていてください!」
松下:
「ありがとうございます。今回お話しした“すべてをカバーしたい”気持ちやネットワークがあったからこそ、コロナ禍でも何とか踏ん張れたと思います。第7回もぜひご期待ください。」