第7回:コロナ禍での法人化と軌道に乗るまで—“作り込み”戦略と次なる時代の伏線

前回(第6回)は、松下が「修繕だけでなく多様なニーズに応えたい」という思いから独立を決意し、社名『ZENBU』に込められた想いまでを紹介しました。
第7回では、いよいよ2020年4月のコロナ禍で法人化してから軌道に乗せるまでの奮闘を中心に、どんな壁に直面し、どのように乗り越えていったのかを伺います。また、不動産業界がこれから迎える時代に向けての少し先の展望にも触れていきます。
1)2020年4月、コロナ禍での法人化―採用とコールセンター立ち上げの壁
松川
「実際に独立(法人化)されたのが2020年4月とのことですが、まさにコロナ禍の真っただ中ですよね。かなり大変だったんじゃないですか?」
松下
「ええ、コロナの影響でリモートワークが広がっている時期でしたし、採用には相当苦労しました。まずはカスタマーサービス(コールセンター)を立ち上げようとしたんですが、人が集まらない…。結局、私自身や家族が急きょオペレーターを兼任してなんとか回したりして、今だから言える苦労話ですけど(笑)。」
松川
「想像以上の壁ですね。とはいえ在宅時間が増えた分、修理やトラブルも増えそうな気もしますが…。」
松下
「実際、一時的には“水回りの使用頻度が上がって詰まりが増える”などもありましたが、それほど爆発的ではなかったです。むしろ『転居』や『内見』など動き自体が鈍った時期なので、コール件数が一気に激増という感じでもなく。とにかく採用面での苦労が最大の壁でしたね。」
2) 「口コミ主導で軌道に乗る——1社1社を“作り込む”姿勢」
松川:
「苦しいスタートだと思いますが、その後どうやって軌道に乗せていったのでしょう? ガンガン営業したわけではないんですよね?」
松下:
「ええ。実はセールスらしいセールスをほとんどしていません。口コミや紹介がメインで、最初の3年ほどはむしろ受注数を絞って対応しました。
理由は、1社ごとに“作り込み”を徹底していたからです。相手企業のニーズを細かく聞き出し、そこに合わせてカスタマイズする。もし数を追いすぎると質が落ちるので、無理な件はお断りもしました。その結果、満足していただいた会社から他社へ紹介が広がり、徐々に軌道に乗っていったんです。」
松川:
「なるほど。“数”より“質”にこだわったからこそ、自然な口コミが生まれたんですね。大変なスタートであっても、その分丁寧さが伝わったという感じでしょうか。」
松下:
「そう思います。特に不動産業界は、噂や評判が回るのが非常に速いので、いい加減な対応はすぐに信頼を失います。初期に時間をかけたのが、今の安定成長につながっていると感じます。」
3) 「これからの不動産業界—次なる時代への伏線」
松川:
「いまは順調とのことですが、不動産業界全体としては、まだまだ大きな変化が待っていそうですね?」
松下:
「はい。人口減や外国人労働者の増加などは、不動産業界だけじゃなく国家的問題にも関わります。そこにAIやDXの波も加わり、これまでとは全く違う視点でサービスを設計し直す必要があると思います。
ただ、この話は次回でしっかり掘り下げたいですね。今やっている“作り込み”も、実はそうした将来の大きな変化を見据えた準備でもあるんです。」
次回予告
松川:
「今回は、松下さんがコロナ禍の真っ只中で法人化し、採用難など想定外の壁を乗り越えながら軌道に乗せていったお話を中心に伺いました。“作り込み”戦略が口コミで広がっていった背景も、なるほどと納得です。
次回(最終回)は、いよいよ不動産業界がこれから直面する大きな変化や、松下さんが進めようとしている新時代への具体的な取り組みを伺ってみたいと思います!」
松下:
「はい。ここまでの道のりがあったからこそ、未来に向けてやるべきアクションが見えてきました。次回でじっくりお話ししますので、楽しみにしていてください!」