緊急駆けつけ業界ヒストリー第2回:ロードサービスから住宅駆けつけへ

このインタビューシリーズでは、緊急駆けつけサービスがどのように賃貸不動産管理の世界に入り込み、現在のように幅広く普及していったのか、その草創期から成長期を当事者目線で振り返ります。
第2回となる今回のテーマは、**「ロードサービスから住まい向け駆けつけへ」**の意外な移行ストーリーと、最初に直面した「住宅トラブルの専門領域が多岐にわたる」難しさについて掘り下げます。
↓第1回はこちら↓
1) 「車と家って全然違う!」ロードサービスが直面した“現場完結”の壁
松川
「前回の紹介で、元はバイクのロードサービスがルーツと聞きました。そこでお聞きしたいんですが、車・バイクのロードサービスと“住まい向けの駆けつけ”は一見似ているようで、どんな違いがあるのでしょう?」
松下
「いちばん大きいのは、現場でトラブルを完結しなければならないという点です。車やバイクなら“レッカー移動”して工場で修理すればOK。でも、家の場合はドアが開かない、水が漏れっぱなし……その場で直さないと生活が止まってしまう。ここが決定的に違いますね。」
松川
「確かに。自宅で水漏れ続行は大問題ですもんね。」
松下
「そうなんです。さらにロードサービスは“自動車整備”という統一された分野があるけれど、**住宅トラブルは水回り、鍵、ガラス、エアコン…**と多岐にわたる。専門業者の仕分けや料金設定がずっと複雑なのが大きな壁でした。」
2) 「え、家の鍵も?」バイクの鍵紛失が生んだ“住まい駆けつけ”
松川
「もともとロードサービス専門だった会社が、どうして家のトラブルにも手を広げようと考えたんでしょう? その始まりが気になります。」
松下
「実はバイクの鍵と家の鍵を一緒に紛失しちゃった方がいて、『家のほうも何とかしてくれないか』と頼まれたんですよ。そこから“バイクのトラブルと同じように、家の鍵開けもビジネスになるのでは?”と発想が広がりました。
さらに、バイクは季節的に事故や故障が多い時期とそうでない時期がハッキリしていて、仕事量に波がある。だったら年中ニーズのある“住宅トラブル”を扱おう、と考えたのが最初のキッカケですね。」
松川
「なるほど、バイクの繁忙期・閑散期の穴を埋める新分野として“住まい”が候補になったわけですね。」
3) 「水回り? 鍵? ガラス? え、屋根も?」拡がり続ける専門領域への苦闘
松川
「でも実際に始めてみると、予想以上に対応分野が広いと思います。タウンページを頼ったとも聞きましたが、どれほど大変だったのでしょう?」
松下
「最初はまさに、**“依頼が来てから業者を探す”**スタイルで、タウンページを開いて片っ端から電話していました(笑)。今では考えにくいですが、当時はまだ地域ごとに専門業者をしっかり網羅できていなかったので、夜中に『水道が詰まった』と相談が来れば、そこから電話しまくって現場へ派遣、という形です。」
松川
「それはかなりアナログですね……。料金もわかりにくいですよね、水漏れと一口に言っても原因が多種多様ですし。」
松下
「そうなんです。ロードサービスなら“牽引○kmで○円”とある程度パターン化できますが、住まいは見積もりしないと確定しにくい。それでも“何かあったらすぐ来てくれる”ニーズは強いので、少しずつ提携業者を増やして全国対応へ移行していきました。」
【エンディング:次回予告】
松川
「ロードサービスとの決定的な違いや、最初はタウンページ頼みだった衝撃のエピソード、よくわかりました。次回はこうした多様なトラブルをどうシステム化し、管理会社が続々と導入するまでに至ったのか――その進化の過程を聞かせてください。」
松下
「はい、何とか効率化するために紙からシステムへ切り替えたり、鍵交換から始まった取り組みが会員制へ発展したり……いろんなドラマがありました。次回もお楽しみに!」