緊急駆けつけ業界ヒストリー第4回:競合企業の台頭と市場拡大―独壇場から始まった新たなステージ

シリーズ全体の趣旨と今回のテーマ
前回は、コールセンター対応をアナログからシステム化することで、爆発的に増え続ける依頼に対応していった様子をお伝えしました。
第4回となる今回は、サービス開始から約3年の独壇場を経て、複数の類似サービスが次々と参入してきた転換期に焦点を当てます。価格競争やメニュー拡充による差別化、さらには「内部から生まれる競合」といった新たな局面をどのように乗り越えていったのか、当時のエピソードを振り返ります。
1) 「3年間の独壇場が終わる時――そっくりなサービスが現れた!」
松川
「前回のお話で、開始から3年ほどは“行けば契約が取れる”ような独壇場だったそうですね。でもその後、類似サービスを展開する企業が現れ始めたとか。具体的にどんな状況だったのでしょう?」
松下
「はい。だいたい2008〜2009年頃ですかね。ある日、まったく聞いたことのない会社が、パンフレットやサービスの流れ、申し込みフローまでそっくりな24時間会員制サービスを立ち上げていて、“電話番号と社名以外ほとんど同じじゃないか”と思うほどでした。
ただ、新しいビジネスモデルは『3年くらいで似たような競合が必ず出てくる』とも言われますし、私自身もその覚悟はありました。“いよいよ来たか”というのが率直な気持ちでしたね。」
松川
「当時は焦りや不安があったんでしょうか?」
松下
「もちろん多少ありましたが、当時は既に会員数が50万人ほどに達していて、そこまで慌てなかったです。逆に“これで他社との比較対象ができて業界が盛り上がるのでは”と思った部分もありますね。」
2) 「価格競争とサービス拡充――真似されるのは覚悟の上」
松川
「競合が増えると価格競争や似たメニューが乱立しがちですが、そのあたりはどう対応したんでしょう?」
松下
「まず価格勝負は想定内でした。ある程度の値下げにも踏み切れるよう準備していましたし、“メニューをどんどん拡充する”ことにも力を入れました。鍵・水回りから始まった対応範囲を、エアコンやガス機器、給湯器といった領域に広げ、ユーザーから寄せられた要望をデータ化しながら手を打っていったんです。
真似されること自体は仕方ないですし、“真似されてもさらに先を行く”という姿勢で臨んでいました。実際、競合が出ると業界全体が認知されて市場が拡大しますから、オペレーションや原価管理も含めて、より改善が促進された印象ですね。」
3) 「内部から生まれる競合? それでも業界自体がブラッシュアップ」
松川
「聞くところによると、“同じ会社にいたメンバーが独立してそっくりなサービスを立ち上げる”というケースまであったとか?」
松下
「はい。社内でメンバーが独立して、ほぼ同じ仕組みを作った例もありました。正直“最強の競合が生まれた”と感じましたが、それだけビジネスとして魅力が大きく、社会的ニーズも高いわけですよね。
ただ、私はむしろ競合が増えることで業界の存在感が高まり、市場が拡大すると考えていました。複数のプレイヤーが参入すると価格やサービス面で切磋琢磨が進みますし、利用者にとっても選択肢が増えるのは悪い話ではありませんから。」
【次回予告】
松川
「サービス開始から3年ほどの独壇場が終わり、似たサービスが一気に増えたことで、価格競争やメニュー拡充など多様な差別化が進んだ -まさに業界が“成長期”の荒波を迎えた状況ですね。各社が同じようなビジネスモデルを真似し始めても、業界の認知度がむしろ上がって市場が広がったという点がとても興味深いです。
次回(第5回)は、この市場拡大の流れの中で、松下さんご自身がどんな思いを抱き、さらには“上場企業ならではのジレンマ”をどう感じながら、新たな決断をしていったのか――その背景をうかがいたいと思います。」
松下
「はい。独壇場だった時代が一巡して似たサービスが増えていく中、私自身も“もっと業界を良くできないか”という気持ちが高まっていきました。その延長で、後に上場企業で経験したギャップや社会的使命感なども含め、次回は詳しくお話ししますね。よろしくお願いします!」